犀星ルーム

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● 99/08/13 田端の文士村記念館
 
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Update 10/03
● 金沢 その1 Update 08/06
● 犀星、大好き! Update 02/14
● 画家/畦地梅太郎さん Update 98/12/05
● じんなら魚 Update 98/11/01
●'98/10/04 前橋に犀星を訪ねる Update 10/10
   

   
● 金沢 その1
Update '99/08/06
 
 犀星の生まれ育った金沢に行ってみたい! と思いつゝも初めて私が彼の地に立ったのは、そう願い始めてから早8年が過ぎた、91年6月のことでした。 例によって1人旅ではなかったのですが、富山空港から金沢に入って昼食の後に、みんなとは暫くお別れしてこの特別な時間を作りました。

 金沢駅前でシルバーメタの"マーチ"を調達して(これは軽快で乗り易かったぁ!)、初めてのこの街を駆け廻ります。 そう!「期待に胸ふくらむ」とは、私にとってはこの時のためのコトバだったような気がしましたね。訪ねる先は当然「犀星の足跡」なので、成り行きで通過こそするいわゆる名所には目もくれず(時間もなかったし…)、まず石川近代文学館へ。

 小雨に煙る赤煉瓦の建物はいかにもそれらしい空気を湛えていて、私のような真の文学ファンならず(?)とも、心とろける、正にしびれてしまうシチュエーションです。 ビゼーの音楽でも有名な「アルルの女」の作者 A.ドーデー の自伝的小説「プチ・ショーズ」の1シーン(たしか、主人公が生徒監として初めて働くことになった学校の中に入った時の印象 …)と一瞬ダブるかのような、そしてやはりこゝも旧制四高の校舎だった(重要文化財だとか)と云う、カビ臭さが残る廊下をそれもまた良しとしてゆっくりゆっくり歩いて行くと、ほんとはずれに犀星展示室が!
 そこに再現されていた彼の書斎の前では、これもまた有名な「抒情小曲集 … ふるさとは遠きにありて思ふもの …」を詠む彼自信の声が流れています。 ミーハーとしては当然のこと、どうしてもその声が欲しくなって帰りがけの受付で申し入れしてみるも、「それ自体も大切な資料だと思いますので、はたしてどうか…」とちょっぴり困り顔をされる。 後日書面で尋ねてみると云うことゝしました。 ただもう一人、やはりその場でその時間を身に染み込ませるかのように、決して短くはない時間じっとたゝずんでいた長野からと云う女性とも、なぜか旧来の知人のように素直にお互いの犀星を語ることができて、まさに素敵な時間になりました。
   
 そして文学館で得た知識から野町小学校(ほとんど印象にないと云うことは、全面改築されていたんだと思う)を回って、犀星が生後すぐ預けられ、育てられたと云う犀川大橋の袂にある雨宝院へ。 まさに街中とは言え、少し強くなった雨がよりいっそうの寂しさをつのらせる佇まいです(写真左)。
 灯された幾本かのろうそく、そして当然のことながら香の匂いが漂ってはいても、宗教的裏付け皆無の私としては、そこでするべき何ものも身に付けていなかったので、只ただ、自分の目に焼き付かせて帰るべく、じっと目の前のすべてを見続けるだけだったんですが…ね。

 金沢の街を流れる二つの特徴的な川の一方、犀川の右岸畔りに犀星の文学碑が建っていました(写真右)。
 詩碑/文学碑の類って、大体がうっかりしていると見過ごしてしまいそうになるものですが(私だけかな?)、さすがにこゝは地元と云うか、お膝元と云うか、きれいに管理されています。 その「流し雛」をかたどったと云われる可愛らしい赤御影石の碑にはめこまれた、犀星自身の筆になる「あんずよ 花着け 地ぞ早やに輝け…」の碑文がいつになくいきいきと目に映ります。
   
 街の東側に走って卯辰山の泉鏡花の句碑、徳田秋声文学碑(こゝにも犀星筆の秋声自歴を刻んだ3枚の陶板がはめこまれていた)と廻って、犀星も好んだと云う宝泉寺から見下ろす浅野川と金沢の町並み(当ルーム玄関に写真がありますよ)からは、この街の持つ優しさとやわらかさ、そして何やら懐かしさまでが、しっとりと感じとれます。 低い瓦屋根のぎっしりと並ぶその風情は、雨のせいもあってかより沈みながらもしずかに光って、私の好きな水の中のようなゆったりとした時を与えてくれました。
 東山界隈の迷路(?)を抜けて金沢駅に戻った時は、もうすっかり夕暮れ。 建物や、街や、山に照り返す赤がとても印象的でした。

 ほとんどいつも、私は犀星の詩から力強いリズムを聞き取ります。 それもきれいな洒落たリズムではなくって、もっと「泥臭い」それでいて強さを持った「土のリズム」みたいなものを…。
 一つには紛れもなくクリエイティブな部分の力量のなせる技だろうし、ひとつには成長や生活からの要素や、また風土からと言っても良い要素もあるのかな? その後者の点で、この初めての金沢訪問は、私にはかり知れないインパクトとたくさんの収穫をもたらしました。
 みんなと合流すれば、またにぎやかな宴が待っているんだけれど、私にとって初めて物理的に犀星に近づいたこの時間、ほんとうに愛しくて大切な数時間となりました。
 
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□ 室生犀星詩集(選集)は手軽な文庫本として2種、岩波と新潮文庫から出ていたかと思います。 このPageのTop へ
   
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